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映画鑑賞記録
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観賞日 2010年8月7日(土)
場 所 新宿バルト9
監督・脚本 倉内 均
原 作 半藤一利 日本のいちばん長い夏(文春新書)
制 作 NHKアマゾンラテルナ
公式HP

まずは公式HPで映画の内容を確認していただきたい。

1945年8月15日、日本は戦争に負けた。それから、65年の歳月が過ぎた。この敗戦後(私は終戦という言葉はそぐわないと思っている。日本は戦争に負けた。だから敗戦というのが正しいと思っている。)日本は他国と戦争をしていない。日本がかつて、アメリカやイギリスを相手に戦争をしていたという事実を知らない若い世代も多いという。今年はこの節目の年と言うことで、例年以上に第二次世界大戦について取り上げた番組に力が入っていると思う。

昭和38年に開かれた座談会を再現するというスタイルで作られたこの映画、本当に考えさせられた。座談会の28人の出席者を現在の各界著名人が演じている。勿論、本職の俳優ではないし、テレビでおなじみの顔だから、ちょっと変な感じもある。しかし、途中、挿入される演者たちの話はとても率直でそちらも興味深かった。

私も、1960年代生まれだから、実体験として戦争を知っているわけではない。だが、太平洋戦争で召集され、スマトラ島で通信隊のトラック運転手として戦い、敗戦後抑留され幸運なことに7年後に無事復員することができた祖父の生の声を聞くことができた。そして、その祖父を待ち続けた曾祖母や祖母や母の経験、終戦当時15歳だった父親の体験を聞くことができたのだ。孫の誰もがその経験を聞かされたわけではなく、祖父母と近い関係にあった私が特に彼らの話を聞く機会に恵まれただけだ。

祖父の外地(敗戦前まで日本は海外に領土を持っていたのだ!!)での戦闘体験、働き手を召集され、年寄りと幼い子供を抱え、さらに都会から疎開してきた義妹家族の生活を厳しい農作業に耐え支えた祖母の生活、乗っていた商船が徴用され南太平洋で海の藻屑となった祖父の弟の悲恋話(彼には婚約者がいたが、その彼女も後を追うように病死したそうだ)。そして、敗戦後、昨日まで「国の為に死ね」と教えていた教師が、豹変する様を見、食べざかりにろくな食糧もなくいつもお腹をすかせ栄養失調でオデキだらけだった少年の父と、7年間も会えなかった父親の突然の帰還にただ驚き戸惑った母の記憶。

私は小学校1年生の時、給食で脱脂粉乳を飲んだ。脱脂粉乳は今ではスキムミルクとか低脂肪乳とか言われて健康に良いものとされているが、アメリカが貧しく栄養が十分に取れない日本の児童の為に、バターを取った後に残る脱脂粉乳をユニセフ経由で給食に提供したというものだという。私は脱脂粉乳を給食で飲んだ最後の世代だろう。はっきり言って、まずかった。少しでも美味しいと思ったのは小倉味とかココア味とか特別に甘みと香り付けがされた時だけだった。アルマイトのボールになみなみと注がれる脱脂粉乳を残さず飲むことを強要された。

近所の観音様の縁日で白い着物を着てタスキをかけた傷痍軍人の姿を見た記憶もある。恐らく、同世代でも同じ記憶を持つ人はそうは多くないだろう。もし、見ていたとしても、記憶に残らなかったかもしれない。祖父や祖母の口から話される戦争の生々しい記憶が、私の戦争に対する記憶スイッチの感度を上げたのだろうと思う。

本マニアの父親の蔵書にナチス・ドイツによるユダヤ人強制収容所の事が書かれた「夜と霧」や、子供むけに書かれた太平洋戦争関連の手記、従軍慰安婦、ソ連抑留者の強制労働、特高警察についてなどについて書かれた本があった。今思うと子供が読むには刺激的すぎるものもあったが、共働きの家庭で親の不在中に子供が読む本を規制する事など出来るはずがない。本当に近い人々から聞いた話と、戦争を記録した本が、私の中にあの「戦争」の記憶として引き継がれている。

敗戦の年に生まれた人もすでに65歳。実際に戦争を戦ったり、戦時下に生きた記憶を持つ人は当然のことながら70才以上の高齢を迎えている。あまりにつらく悲しい記憶なのだろう。自分の子供や孫に伝えることなく、鬼籍に入る人も多いと聞く。戦争は遠いものになり、日本人はかつて日本が他国と戦っていたという事実さえ忘れ去ろうとしている。

だが、世界では今もこの瞬間も、戦争が行われている。今日、平和なのだから、明日も平和だと信じて暮らしている私達は、明日本当に今日と同じ平和な朝を迎える事ができるのだろうか?明日は誰にもわからない。でも、少なくても、そう信じなければ生きていく希望が持てない。

私は、二人の子供に機会がある度に自分の身近な人から聞いた話を伝える努力をする。戦争は人間にとって最も愚かな行為である。しかし、戦争によって技術が進歩したという側面もある。人間は今もって「戦争」を根絶できずにいる。世界中のだれもが平和を願っている。人間が「戦争」を根絶できる日が来るかさえも分からない。だからこそ、人間の愚かさを肝に銘じ続け、流されて平和を手放してしまわないようにしなければいけないと思う。一度手放してしまった平和を再び取り戻すのがどれだけ困難であるか、この映画は教えてくれる。

「平和」は誰かに与えられるものではなく、自分たちで守るものだから、記憶をつなげていかなければいけない。自分が父母、祖父母、曾祖父母の作った社会に生きる存在であると同時に、今を生きる私達が、子、孫、曾孫の生きる社会を作る存在だという事を忘れてはいけない。平凡は人間は、道を切りひらくことはないかもしれないが、先人が拓いた道が再び閉ざされないように、踏み止まる努力をしなければいけないと思う。

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