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映画鑑賞記録
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鑑賞日 2010年4月10日(土)
場 所 銀座テアトルシネマ
監 督 カルロス・サウラ
撮 影 ヴィットリオ・ストラーロ
製作国 イタリア・スペイン合作映画
製作年 2009年 
原 題 IO,DON GIOVANNI
公式HP

最近は気になる映画は初日初回に見に行くようにしています。早く見たいというのもあるし、初日初回は特別なイベントがあったり、プレゼントがあったりするからちょっとお得な気分になれます。今回はイタリアのパスタメーカーからパスタをいただきました。

「ドン・ジョバンニ」がモーツアルトの有名なオペラだということは知っていたし、ドン・ジョバンニと彼に誘惑される村娘ツェルリーナのデュエットが高校の音楽の教科書に載っていた。筋書きをよく知らなかった私たちは、とんでもない口説きの場面とも知らず、可愛らしく「どうしたらいいかわからないわ~♪」と歌っていたんですよね。

当時はオペラについてよく知らないから、台本もモーツアルトが書いたのかと思っていたんです。ワーグナーのように台本を自分で書いた人もいたようですが、普通はオペラの台本作家という人がいたんですね。普通の歌だって作詞と作曲が別な方が多いですものね。ダ・ポンテは「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」「コシ・ファン・トッテ」の台本を書いているとか。

この映画は、オペラ「ドン・ジョバンニ」の台本作家ロレンツオ・ダ・ポンテと、モーツアルトと稀代の色事師カサノヴァを中心とした創作秘話ともいえる物語です。予告編を見たときからとても楽しみにしていたのです。何しろ私は18世紀フリークですから、時代的にもドンピシャだし、モーツアルトの楽曲も好きですから~。

導入部はヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲「四季」の「夏」の音楽をBGMにしてヴェネチアの運河をゴンドラがゆっくりと進んでいく場面からはじまります。どうやら古楽器による演奏のようで少しくぐもった音が湿ったヴェネチアの空気を感じさせます。余談ですが、ヴィバルディは25才で司祭になってピエタ慈善院付属音楽院 (Ospedale della Pietà) で音楽教師兼作曲家をやっていたのだけれど、このピエタ慈善院というのは、捨て子や孤児の女の子を世話していたところだったんですね。捨て子や孤児の中にはおそらく娼婦が産み捨てた子供も多かったでしょう。ヴェネチアと言えば、歓楽の都市というイメージも強いですよね・・・。ダ・ポンテも聖職にありながら放蕩生活と秘密結社への参加を理由にヴェネチアを追放されてしまうんです。ヴィバルディの曲で始まったところは、単にヴェネチアという土地つながりではないのでは?っと言うのは深読みしすぎかしら・・・・。

全編セットによる撮影ということですが、完全に計算されて構築された画面構成や照明効果は素晴らしいです。現実を忠実に再現するという意味ではリアルではないかもしれないけれど、人物の存在感や時代の雰囲気という点では非常にリアリティを感じました。

役者さんも非常によかったです。ダ・ポンテ役のロレンツオ・バルドゥッチは冷やかな美貌!イタリア男ってちょっと暑苦しそうな印象もあるけれど、ものすごくクールな印象で、緑がかった瞳の色と口角が上がった薄い唇が上品だけれど、どこかエゴイスティックな印象でダ・ポンテの人となりにぴったり。パンフレットにダ・ポンテの肖像画が載っていましたけど、若い時はさぞや色男だったろうなあ~と思わせるものでした。何しろ目が大きくて印象的。この目で見つめて落ちなかった女はいなかったんだろうなあ・・・と妙に納得。

モーツアルト役のリノ・グワンチャーレも、モーツアルトの子供のような人懐こさや繊細さを体現したような人で、良かったです。ラグビーでイタリア代表になったこともあるなんて信じられないくらい、多感な青年を感じさせます。笑った時のちょっと不揃い気味の歯まで、なんだかモーツアルトっぽい。

二人が、イタリア語とドイツ語を自在に操りながら会話するシーンがあるのですが、一つの場面の中で、それぞれ互いの言語を入れ替えながら話すところに二人が複数の文化を自由に行き来する能力があり、互いにそれを感じながら創作に励んでいく様子が透けて見えます。オーストリア皇帝ヨーゼフ2世もそういえばドイツ語とイタリア語を話してました。「アマデウス」のヨーゼフ2世はちょっと偏屈で冴えた感じじゃなかったですけどこの映画の彼は、音楽に対する造詣も深い人物として描かれているように思えました。

カサノヴァ役のトビアス・モレッテイの怪人物ぶりのよかったです。

ダ・ポンテの永遠の恋人アンネっタ役の女優さんエミリア・ヴェルジネッリは本当に瞳が印象的。水色の瞳に吸い込まれてしまいそう。監督がヒロインのイメージに近いといってえらんだだけのことはあります。

ダ・ポンテとカサノヴァは「ドン・ジョバンニ」の台本の中に自分たちの人生哲学を結晶させていき、モーツアルトは、美しい音楽でそれを効果的に人間の心に響くものとして表現していく過程がとても面白い。ドン・ジョバンニは己の人生を悔い改めるのか、それとも自らの信念に殉じるのか・・・?ダ・ポンテ自身の人生の選択は?

モーツアルトはドン・ジョバンニ完成の3年後、この世を去り、ダ・ポンテは87歳で某所で亡くなったという字幕を見て、はあ~と深いため息を思わず漏らしてしまいました。
モーツアルトって、もしかして、サリエリじゃなくて、ダ・ポンテに殺されたんじゃないかって思ったほどですよ・・・・。

だって、映画の中で、ダ・ポンテはオペラのドン・ジョバンニに今までの人生の放蕩を全部背負わせて地獄の劫火に焼かせちゃう。それでちゃっかり自分は恋人と新しい人生始めちゃうんですよ。
モーツアルトは、自分と父親との確執をはっきりと自覚してしまう。晩年の彼の苦悩はここから始まったような感じで何とも・・・・。


歌手役の方はみな本物のオペラ歌手だそうです。音楽と映像、両方とも楽しめる良い映画でした。
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