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映画鑑賞記録
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鑑賞日 2010年4月18日(日)
場 所 銀座テアトルシネマ
監 督 ラデュ・ミヘイレアニュ  
撮 影 ローラン・ダイアン
製作国 2009年
製作年 フランス
原 題 Le concert
公式HP

フランス制作の映画だが、監督はルーマニア生まれでユダヤ系。映画の舞台の大半はモスクワ。

ベルリンの壁が崩壊してすでに20年が過ぎた。東西冷戦の記憶は、今の若い人たちにはピンと来ないだろうし、共産主義体制に期待を寄せた世界もその期待に失望したことも、別世界のことかもしれない。1960年代生まれの私にとって、東西冷戦は核戦争の脅威として記憶の中にある。戦争の記憶を祖父母や両親から聞く機会もあった。墓参りに行くと、忠魂碑と刻まれた石碑に花と水を捧げる事は当然のことだった。まだ、戦争の記憶が身近にあった。もしかすると、それは私の年代ではまれなことなのかもしれないけれど。

映画の中に描かれる主人公の不遇に類することが現実にたくさん起きていただろう。それは、別に外国の出来事に限らない。過去のことにも限らない。日本だって、太平洋戦争が終わるまで、特高、要するに日本版KGBみたいなものが存在していた。歴史の闇の部分に目を向けたがらない日本人は忘れてしまっているかもしれないが、国家権力というものが暴走したとき、人間の最もやわらかく美しいものは踏みにじられてしまうのだということを知っておかなければならないと思う。歴史を学ぶ意義は、そういった人間のどうしようもない部分を忘れない為にあるような気がする。

固いことを最初に書いてしまったが、映画は文句なしに楽しかった。30年前に政治的な問題で指揮棒を奪われた主人公アンドレイが、パリのシャトレ座から送られてきたFAXを見て、偽オーケストラになりすます事を思いつくところから始まる。公演を成功させる為に奮闘する主人公とその仲間たち。なぜ、パリなのか、なぜ、チャイコフスキーの協奏曲なのか、ラストに向けて、団員達の思いが一つになり、主人公アンドレイが指揮する協奏曲に乗せてその答えが明かされていく。

笑って泣いて、美しい音楽に酔った2時間はあっという間でした。ソロ・ヴァイオリニスト、アンヌ・マリー役のメラニー・ロランの美しさもいいですが、楽団員の面々やコンサート・マスター役を務めるロマの男性のなんと個性的であることか!

主人公アンドレイが開演を前に、元KGBであり、彼らの追い落としに加担した元マネージャーに言う言葉が心に沁みます。さて、なんというかはぜひ映画をご覧になって確認してください。音楽はまさに時間そのもの。その時間の中で人が集う意味はなんなのか。苦難の時代を乗り切り、夢を実現させるその力がどこから生まれてくるのか。

フランスの懐深さを感じさせる一作でありました。





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