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映画鑑賞記録
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鑑賞日 2009年9月6日(日)
場 所 シネスイッチ銀座
監 督 ジャン・ポール・ジョー
製作年 2008年 フランス

南フランス、ランドック地方の小さなバルジャック村での学校給食と高齢者宅配給食のオーガニック化事業の取組を追ったドキュメンタリー。映画の冒頭で環境汚染と健康被害の問題を討議するユネスコの会議の模様が取り上げられ、現在の私たちが直面している食の現状が明らかにされます。この現状を解決する手だてはいったいあるのか?監督はこの小さな村の取組を通じて、その一つの方法を示唆しているのだと思いました。

農村部に育った私は、空中散布の薬剤のにおいがぷんぷんと漂う中、登校した記憶があります。農薬を調合し、散布する農家の人の姿も身近に見てきました。映画の中で語られる「生産者が自分の食べるものは別に作っている(自家消費分は農薬を使わない)」という事実もよく聞く事でした。
日本の農業は今高齢化・後継者不足・耕地荒廃に瀕死の状態です。中国産毒餃子事件で国産食糧へのニーズは高まりましたが、ここにきての不況で食糧品の値段はむしろ安く抑えられています。
日本の食糧自給率の低さは異常です。今輸入がストップしてしまったら、日本を深刻な飢餓が襲うでしょう。食物の生産は機械生産のようにはいきません。一度雑草に埋もれてしまったたんぼを元の水田に戻すためには多大な労力が必要となります。農業にはマニュアル化できない経験の積み重ねが必要です。自然を読み取り、それに合わせてきめ細かく対応していかなければならないのです。食糧という生きるための根幹について、あまりに知らなすぎ、軽視しすぎてきたつけが回ってきたということなのでしょうか。

この映画の中で取り組まれた方法がどこにでも通用するわけではないと思います。しかしながら、いくつかの重要なポイントがあると思います。
一つには、行政が強い意志をもつということ、子供たちを教育するということ、自分たちの問題として、真剣に考えるということです。
未来は子供たちのものです。大人が子供たちの未来を食いつぶしている現実があります。そのことに、なかなか大人たちは気がつきません。

明日からすべてをオーガニックに変えることは無理でも、産地を確かめ、添加物の少ないものを選ぶようにするだけでも、社会は変化することが可能だと思うのです。劇的にではないにしろ。

安全性への意識を持つこと、農業生産物にかかるコストをきちんと知ること(農家の人々の労働の集約が生産される野菜や果物なのです)で、安全で優れた品物に妥当な金額を払えるようになるはずです。

日本の教育の不十分なところは、物事にはすべからくコストがかかっているという事実を知らせないことです。物やサービスにはそれを生み出すためのコストがかかっている。だとすれば、コストを回収できないも物やサービスは成り立たないということです。

安ければいいという考えは、この原則から外れます。私たちの労働にしてもコストなのです。1円でも安く買いたいと思うのは仕方ないけれど、それによって、自分たちの労働も支えきれなくなる可能性があるのです。
価値ある物に見合う金額を払うことで、自分たちが求めるものを供給してもらうという関係を作らなければいけないと思います。

自民党から民主党に政権が代わりましたが、頭のすげ替えだけで政治が変わるはずがありません。政治は私たちのもっと身近なものにならなければいけません。

この映画は、単に食というテーマだけではなく、生きていくということについて多くのことを考えさせてくれると思います。

映画の内容とちょっとずれますが、この映画、いかにもフランスだなあと思わせるものが出てきました。

それは子供たちの歌です。オーガニック推進のテーマソングのようなものを子供たちが2度歌います。最初はいよいよオーガニック給食が始まるというころです。子供たちはぎくしゃくとなかばいやいや歌っています。
終盤にもう一度この歌を子供たちが歌います。そのときには、生き生きと自信にあふれた歌声に変わっています。子供たちが学級菜園で野菜を育て、オーガニックへのさまざまな知識を得たことによって変化したのだと思います。そして、この歌詞が、まるで、現代版ラ・マルセイエーズといってもいいようなものなんです。けっこうびっくりするような歌詞なんです。

そして、地域住民が何度も討論を重ねていくところです。それぞれの人々が自分の言葉で考えを出し合っていきます。いいか悪いかをすぐに断じるのではなく、それぞれの主張をきちんと出し合い、すり合わせをしていこうとする姿に驚きました。

見終わって、やっぱりもう少し食生活を大切にしようと思いました。
料理は好きじゃありませんが、体を作るのはやはり食べ物ですから・・・。





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