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映画鑑賞記録
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鑑賞日 2009年5月31日(日)
場 所 シネスイッチ銀座2
監 督 ピエール・ショレール
製作年 2008年

フランス映画を見るたびに思うのだけれど、どうしてこうラストの納まりが悪いのだろう。起承転結で言えば「結」の部分が、まるで空中に投げ出されて、ゆっくりとひらひらと落ちてくる紙を掴もうと空を見上げて右往左往しているような気分にさせられる、そんな終わり方なのだ。ハリウッド映画や日本の映画だと、ラストはちゃんと納まるように作られている事が多い。ハッピーエンドだろうと、悲劇的なラストであろうと、ちゃんと終わりましたよって納得がいくような終わり方をする。ところが、フランス映画って、心の収まりがつかないままに唐突に終わる。え?これで終わり?それで、この先どうなるの?って良く噛んでいない肉を無理やり飲み込まされたようなつっかえ感が残る。
でも、それこそがフランス的なのかなあと最近は思うようになった。
人生って映画みたいにいつも区切りよく行くわけじゃない。たとえ表面が変わらぬように見えたって川の流れみたいにいつだって動いているものだから。そう思うと、フランス映画はとてもリアルな人生を切り取った映画なのかなあと思ったりする。


《以下ネタばれあり》
ベルサイユ宮殿を囲む雑木林に住み着いていたホームレスの若い男の下に
幼い子供を連れた若い女が迷い込む。女は家族から見放され、子供を抱え路上生活をしながら必死に生きている。たとえ路上生活を余儀なくされていても、子供に精一杯子供を愛していることが画面から伝わってくる。子供も母を慕い健気に生きている。女は何とかして経済的な自立を果たしたいと願うのだが、幼い子供づれではそのチャンスすら掴むことができない。女は偶然知り合った男と一夜を過ごし、そこに子供を置き去りにしてしまう。多分、男が発した「もう5日も人と話していない」という言葉のなかに何かを感じ取ったのだろう。女は、更生支援所を訪れ、老人介護の仕事につき、そこで多分はじめて彼女を肯定してくれる言葉を掛けられる。休みの日、置き去りにした子供を捜しに雑木林に戻るが、男がいた掘っ立て小屋は燃えてしまっていて、男も子供も姿を消していた。

子供を置き去りにされた男は、最初は仕方なく子供の面倒を見だす。子供は母を求めて泣くでもなく、男と寄り添って暮し始める。ベルサイユの森に住むホームレス達のつくる共同体の中に、子供は受け入れられ、たとえ寒さに震えひもじさにべそをかいても、男の傍を生きる場としていく。

ある時男は病気になってしまう。子供は健気に看病するが、男の病気は深刻な事態となってしまう。男は子供に誰か助けを呼んでくるように命じる。子供は森を抜け必死でベルサイユ宮殿に走り、18世紀の衣装を身につけた男に助けを求める。恐らく子供は男が話したベルサイユ宮殿の王の侍従の話を覚えていたのだろう。男は子供の知らせで助けられ病院に収容される。病が癒えたとき、男は大きな決心をする。
長く帰ることのなかった父親の元に戻る。若い妻と再婚した父親は息子を一度は拒むが、息子が連れてきた幼い子供の為に受け入れる。男は真面目に働きだす。男の子供ではないことは男の父親にはわかっていた。だが、幼い子供を守りたいと思う息子の気持ちを汲み取ったのだ。そのことが、男の父親に対するわだかまりを解いていく。やがて、男は嘘をついてまでも子供を自分の子供として認知し親権を得る。子供を学校にやるためだった。子供は学校になじめずベルサイユの森に戻りたいという。男は、再び父親の家を一人去っていってしまう。7年後、幼かった子供は思春期をむかえる少年へと成長していた。男の父親の元をかつて子供を捨てた母親が尋ねてくる。子供は託された手紙を一度は拒むが、手紙の内容を読んでもらって、母親の気持ちをしり、尋ねていき母親が成長した子供を抱きしめるところで映画は終わる。

この映画の中で、フランスの社会支援制度のことがいろいろ出てくる。
ホームレスに一夜の宿を提供するサービスや、生活保護のこと、などだ。
映画を見ることによって、旅行に行っただけでは見えてこない市民達の生々しい生活の一端を見ることが出来る。

最初に書いたように、何か明確な結論がある映画ではない。むしろ物語りはこの先も続いていくのだと思わされる。人が人と寄り添って行く意味はなんなのか、人にとって生きるってなんなのかを静かに問いかけられてくる。そんな映画だと思う。








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