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映画鑑賞記録
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鑑賞日 2009年1月25日(日)
場 所 銀座テアトルシネマ
監 督 エリック・ロメール
製作年 2007年 

映画に詳しいわけではないのでエリック・ロメール監督がどれほどの巨匠なのかは知らないが、私はこの映画はとても素敵だと思う。何しろ、全編、効果音楽というものが入っていない。聞こえるのは、小鳥のさえずり、川の流れる音、木々の葉擦れ、人々が草を踏む音、衣擦れの音、恋人達の甘い溜息といった自然の音だ。画面いっぱいに広がる風景は、明るく清らかに美しい。
主人公「セラドン」役のアンディー・ジレはモデル出身とあって、さすがに端正な顔立ちと抜群のスタイル。立っているだけで一幅の絵のようである。一方「アストレ」役のステファニー・クレヤンクールもふわふわとした金色の巻き毛と、明るい青い瞳の清潔な美貌。とにかくめちゃくちゃきれいな青年と、美しい乙女達満載で見ているだけで眼福な作品である。
もし、燃えるように激しい恋の物語がお好きなら、この映画は退屈で仕方ないだろう。
ストーリーを言ってしまえばなんということのないお話。この映画の筋立ては、はらはらどきどきするようなものではなく、素朴な青年と乙女のちょっとした恋のすれ違いの話に過ぎない。スピーディー且つ緩急のある展開を望む人は、眠ってしまう可能性もある。

 だいたいもって、原作は17世紀文学サロン、特にパリの貴婦人たちの間で大流行した小説『アストレ』。5000ページもある大作だそうである。物語の舞台は5世紀、キリスト教化する前のガリア(フランス)という事になっている。まあ、要するに17世紀当時の人があくまでも想像した牧歌的な世界ということになる。主人公達の恋のすれ違いを巡り、「愛とはなにか」ということが会話を通してさまざまに論じられるのだが、この台詞がキリスト教以前の世界と言うことになっているにも関らず、とてもキリスト教的な「愛」を思わせる表現が出てくる。17世紀の上流階級たちの思考が現れているといってもいいだろう。それを現代の監督がそのまま使っているのが面白い。更に、シェイクスピアの作品に良く出てくる狂言回しのような役どころの人物がいたりして、こういった存在がお約束になっているのだなあと妙に納得してしまう。
 
 この作品の予告編等では大変官能的な作品のように表現されている。しかし、現代的で濃厚な大人の世界を期待したら、全くの拍子抜けとなるだろう。いうなれば、ここに描かれているエロティシズムは、人生の酸いも甘いも苦いも辛いも味わったご老人が、人生最後にこそ見たいと願う青春の瑞々しくも甘美で清潔なエロティシズム。
乙女達の薄物のスカートが透かせて見せる脚の影、ギリシャ風の肌をむき出しにした丸い片肩、惜しげもなく零れ落ちる白い乳房、日に透ける金色の巻き毛は確かに美しい。
若者の白い胸、すらりと伸びた脛、高い鼻梁に物憂げに伏せた睫毛。恋人達の抱擁も、絡めあう指先も、絡み合う視線も美しい。その美しさをひたすら堪能できる人ならば、きっと楽しめる作品と言えるでしょう。
 人生を折り返してしまった私は、とっても楽しむ事ができました。
 
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