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映画鑑賞記録
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鑑賞日 2011年7月9日(土)
場 所 新宿武蔵野館
監 督 ジャン=ピエール・ポッツィ/ピエール・バルジエ
製作年 2010年 フランス

パリ近郊の「教育優先地区」にあるとある幼稚園での取り組みを追いかけたドキュメンタリー映画。「教育優先地区」と聞くと、私達は教育モデル地区のようなものを思い浮かべるでしょう。ところが、実は逆なのです。教育の成果が上がりにくく、教育に対し特別な配慮や支援が必要とされる地区の事です。

画面から読みとれるのは、移民が多く住む下町の幼稚園であるということ。そこで行われている取組が、年中・年長の子供達に対して、哲学の授業を行うというものです。それこそ、大学生ですら哲学の授業が必修ではない日本人にとっては、驚きのものです。

哲学と言うと、なにかものすごく高尚で難しいように考えがちですが、とどのつまりは、「物事について考えること」ということです。そう言葉を置き換えれば、小さな子供達に、物事を考える方法を教えていく授業と捉えることができるでしょう。その事が、将来彼らの為に有益であるという信念が指導する先生の言葉からひしひしと伝わってきます。

大人は皆かつては子供だったのに、自分が子供だった時の事を忘れてしまいます。大人達は子供に聞かせたくない話は声を潜めて話すけれど、子供はちゃんとそれを聞いていたりします。大人達が矛盾したことを言えば、なんだかおかしいと感じます。でも、子供は大人にそれを言葉で伝える術を持たないし、子供が精一杯自分の考えを伝えようとする言葉を、大人は聞きとろうとしません。

自分自身の考えを持ち、きちんと言葉にする教育を、残念だけれど日本では積極的に行っていません。というより、むしろ、自分自身の考えを持つこと、積極的に言葉にすること、自分を主張することを封じ込めようとします。

言葉よりも、態度や雰囲気から相手の感情や考えを察することを重視しようとするのが日本の伝統だったかもしれないけれど、今はあまりにそれがゆきすぎてしまっているような気がします。

哲学の授業と言いながら、それは自分が経験したこと、感じたことを言葉にしていくことを学ぶ授業だなと思いました。子供達は少ない語彙であっても、精一杯自分の考えを相手に伝える為に話そうとします。それを、大人が助けていくことで、どんどん言葉が広がっていきます。

この映画の中の子供達は本当に普通の子供達です。遊ぶことを楽しみ、喧嘩したり笑ったり、疲れて眠りこんでしまったり。

彼らは確かにまだ大人の手助けなしに生きていくことはできないけれど、ちゃんと感情も彼らなりの考えも持っています。まさに、小さな人間です。

二人の子供を育てる中で経験してきた個性の発露を懐かしく思いだしながら、子供の持つエネルギーに笑ったりしみじみしたりできる良い映画でした。

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